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昭和33年 大阪国際芸術祭チラシ 五月興行 因会・三和会大合同公演 菅原伝授手習鑑 道頓堀文楽座 

「世界にその比を見ない高度の人形芸術・日本の文楽、この誇るべき伝統文化は、ふるさとの地大阪に、現在の最高演技陣を動員して春の祭典を飾ることになった。.....」 大阪国際芸術祭記念プログラム紹介文より


特集24 編集後記

 まもなく年が暮れようとしているが、今年は大変な災害続きの年であった。その度に心の一部が抉り取られ、埋めようのない穴が空いてしまったようである。すべての人が物心共に修復するには、これから何十年も掛かることであろう。こんな年だからこそ人の心情に共感するとともに、時代の継承とさらなる進歩の機会に自分が生かされていることを感謝したい。

 今年の文楽界での話題としては、春に源大夫と藤蔵の名跡が復活した。珍しく文楽一家出身者の襲名であるが、私としては源大夫が続いていくことをうれしく思っている。無形文化は、人こそが源泉である。源大夫師におかれては健康に留意し、未来の文楽のため継承に力を尽くしていただきたい。参考までに、上記チラシ公演には、山城少掾、八代綱大夫らとともに古住大夫(現・住大夫)、織の大夫(現・源大夫)が出演している。

 さらに大阪では、別のことでも新しい動きが見られた。大阪城が、赤く染まったのがきっかけとは思えないが、首長選の結果によって都市の統治機構が新しく変わり始める。これから、都市における文化振興のあり方も議論されることであろうが、理想と予算の隔たりに困ることが予想される。都市に付加価値を持たせるためにも、点と点を結び付けて、規模を大きくしなければ、十分な相乗効果も期待できない。月並みではあるが、仕組みを改めるのであれば、日本で社会への投資や寄付行為による資金動員が盛り上がらないことを、何とか変えられないものかとつくづく思う。

 さて、特集におつき合いいただき有り難うございます。今回、引き続き古靱・三代清六を取り上げました。最近、特集終了後の義太夫SPレコード音源集へのリスト化が遅れていますので、しばらくは過去特集の音源リンクを御利用ください。また近年、復刻CDとしても古靱太夫(山城少掾)関連の音源がずいぶん世に出ました。さらに、いくつかの名作で映像のDVD化も続いていますが、これらは世界無形文化遺産ブランドの増強に寄与することでしょう。次の特集は、まだ古靱・清六の音源紹介が少し残っていますが、小休止ということで過去の特集の追補を取りあげます。今後とも、宜しくお願い致します。

  2011. 12. 31 大枝山人