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戦前はがき 齋藤清二郎:絵 文楽座版 94mm x 145mm

                   


特集34 編集後記

 北野の天神さんの梅花祭も終り、穏やかな日差しの中で小鳥のさえずりが騒がしく感じられるようになってきた。まもなく東大寺二月堂のお水取りが過ぎれば、いっきに桜前線が到来することであろう。目を転ずれば、芸での芽吹きもはじまったようで若手による催しが盛況のようである。
 さて、暖かくなり普段乗る電車にも国内外からの多くの観光客を見かけるようになった。駅ホームのポスターも春向きとなり、4月文楽公演のポスターがひと際目立っている。4月公演は、一谷嫩軍記から熊谷次郎直実の話、その他、名作ばかりである。一谷嫩軍記は、浄瑠璃作者四天王の一人といわれた並木宗輔が三段目までつくって亡くなったという遺作である。この熊谷陣屋は、披露興行に縁のあるもので、大正十三年に三代津太夫、昭和十七年に二代古靱太夫と櫓下披露でも出された。「駒の頭を立て直し...」、二代目玉男を周りが如何に盛り上げるか楽しみである。
 また、特集では、雛太夫、角太夫、叶太夫、そして錦太夫の音源を取り上げた。音が悪くわかりづらいが、声質はさまざまである。堀江座の三代団平が見出したという錦太夫が、渋い語り口であるところが興味深い。

 引き続き次回の特集は、「名人のおもかげ資料」の補足を中心に企画を準備中です。新年はじめから、しばらく体調が思わしくありませんでしたが、ようやく復調しました。いつの間にか老化を感じる年になってしまいましたが、がんばってまいります。今後とも宜しくお願い致します。

2015. 2. 28 大枝山人